石綿作業主任者
石綿等を使用した建物の解体作業や取り扱いに際し、必要な技能講習。
作業主任者以外の作業従事者に向けた教育として、石綿作業特別教育がある。
2006年以降、製造禁止となった石綿だが、未だ古い建築物内に含有物がある。
石綿作業主任者
資格要件
資格区分:技能講習
受講日数:2日間
受講要件:18歳以上
難易度:修了試験あり(受講すればほぼ合格点を取れる)
内容
その1 各役割と資格
2006年に新設されてから、比較的短いスパンで法改正されているため、石綿の業務に関連する資格者と業務がややこしいことになっている。
【事前調査】
……一般調査者の資格取得後、実地研修+口述試験に合格したもの。
石綿作業主任者の講習だけでは、受験資格を満たさない。
「一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)」
……建築または石綿含有建材調査等の実務経験を経た者が受けられる試験。
石綿作業主任者の講習修了で受験資格を満たす。
「一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)」
……一般調査者と同じ。
【作業】
「石綿作業主任者」
……石綿の取扱作業を指揮する作業主任者。技能講習修了者。
「石綿取扱作業従事者」
……石綿の取扱作業従事者。特別教育修了者。
「特別管理産業廃棄物管理責任者(特管責)」
……特管責講習修了者。石綿を処理施設に搬出する際に必要となる資格者。
次の解体工事を行う際は、石綿含有調査の報告機関への報告が義務付けられている。
- 床面積の合計が80㎡以上
- 請負代金 税込み100万円以上の改造・補修工事
改造・補修工事の中には、壁や屋根だけでなく、給排水給湯空調設備、照明設備等も含まれる。
報告が不要な規模であっても事前調査は必要。
そのうえで、発注者に書面報告・調査結果の掲示を行う必要がある。
石綿作業主任者は事前調査を行えない。
事前調査を行うためには、調査者の資格が必要。
その2 講習内容
石綿とは鉱石を砕いて綿状にしたもの。
昭和30年代~平成9年ごろまで石綿含有製品が製造されていた。
縫い針状の細長い形状をしており、吸入すると肺に入り込み、肺がんや中皮腫を引き起こすことがある。一度、石綿が肺の中に入り込むと、なかなか抜けず、動くたびに内部を傷つけ続ける。即時に症状が現れるわけではなく、10~30年後といったあとに症状が現れるケースが多い。
その3 作業
石綿含有建材の発じん性ごとに、レベル1~3まで分けられており、それぞれ状況に応じた作業・保護具・措置を講じる必要がある。
作業の流れは大体次の通り。
- 「事前準備」……計画・要領書・届出書の作成、資材準備、資格確認、掲示。
- 「立入禁止区域の設定」……保護具着用者のみの立入。濃度測定。
- 「除去作業」……換気装置・保護具確認、含侵確認、除去、濃度測定。
- 「石綿処理」……袋詰め、清掃、飛散防止処理剤、抑制剤の吹付。
- 「後片付け・清掃」……機材の撤去、養生材袋詰め、仕上げ清掃、濃度測定。
- 「廃棄物処理」……処理施設への搬出。作業の記録(40年保存)。
石綿を取扱う作業場では、絶対に禁煙。
雑感まとめ
令和4年、令和5年と立て続けに施行される部分もあり、ちょっと混乱する内容も多かった。
修了証については、講習を受けていれば、修了試験の合格は容易い。
実務となると、法令改正部分の読み込みが必要になると思われる。
解体工事のピークは2028年と言われており、今後10年は石綿関連に注意が必要。
とはいえ、10年で石綿がすべて無くなるわけではないと思う。
事前調査が義務化されていなかったころ、設計段階での調査もおざなりで施工に入ってから、金額的にも工期的にも余裕の無い段階で石綿含有が発覚ということもしばしば。
発注者にお伺いを立てた結果、その部分を取り壊さない方向で工事をするという事例もあった。
こういった手続きを踏んで、石綿が飛散するから止めようと判断してくれる発注者や元請けは良い例で、悪い例だと「良いから黙ってやれよ」とごり押ししてくるところもある。
良い例にしろ、悪い例にしろ、石綿が多少なり残されたまま、リフォームされているところがあるのではないかと思う。
良い例であれば、一度報告が上がっている以上、どこかしらに記録が残るが、悪い例であれば下請けの胸の内にしか記憶が残らない。
どちらにせよ、事前調査が義務化されたことについては、下請けにとっては健康被害のリスク低減という意味では良かったのかなと思う。