コウシのメモ帳

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酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者

酸素欠乏症・硫化水素中毒にかかる恐れのある場所で作業をする場合、現場の指揮・監督、作業場の環境測定等、災害の防止措置を行うものとして、選任しなければならない作業主任者資格の一つ。

酸素欠乏症にかかる恐れのある場所には、地下室、ピット、下水道、密閉された室内等があり、それらの場所で作業を行う場合、現場に一人以上「酸素欠乏危険作業主任者」の配置が必要。

 

 

酸素欠乏・硫化水素危険作業者

資格概要

資格区分:技能講習

受講日数:3日間

受講要件:満18歳以上

関連法規:安衛法 第14条、施行令 第6条21号

難易度:修了試験(1時間)・実技試験あり(受講すればほぼ合格点を取れる)

 

内容

その1 講習の種類

酸素欠乏危険作業関連の特別教育・技能講習は全部で4つある。

酸素欠乏危険作業者(特別教育) ※硫化水素中毒は含まない

酸素欠乏・硫化水素中毒危険作業者(特別教育) ※上記資格を包括

酸素欠乏危険作業主任者(技能講習) ※硫化水素中毒は含まない

酸素欠乏・硫化水素中毒危険作業主任者(技能講習) ※上記資格を包括

酸素欠乏だけの資格か、酸素欠乏・硫化水素を含んだ資格かの違い。

旧名称では第一種酸素欠乏=酸素欠乏のみ、第二種酸素欠乏=酸素欠乏・硫化水素中毒だった。

酸素欠乏だけを受けている人をあまり見ないので、大半の人が酸素欠乏・硫化水素中毒危険作業主任者を受けていると思われる。

 

 

その2 講習内容

酸素濃度18%未満の空気を吸い込むと、酸素欠乏症になりますよ。

硫化水素濃度10ppmを超える空気を吸い込むと、硫化水素中毒になりますよ。

換気の悪い空間では、作業場の安全を確保して作業しましょうね、という講習。

必ず覚えておかなければならない数字は、上記2つ。

 

 

その3 実務

ピット内に立ち入ることが決まったら、用意するものは以下の通り。

  1. 水中ポンプ
  2. 送風機、風管
  3. ライト
  4. 立ち入り禁止のための柵・囲い(2か所分)
  5. 立ち入り禁止・ピット内作業中の表示
  6. 酸素濃度測定表(元請けによって書式が有ったりする)
  7. 酸素濃度計
  8. 脚立

ピットにおいて止水処理が甘いか、谷に位置しているところだと、内部が水浸しになる。ピットの床面が濡れているのが見えたら、警戒するに越したことはない。

床スリーブが開いているときは、大抵どこを計測しても21%。

問題は、床のスリーブを開ける前と、塞いだ後。

普通は計測前に換気を行うため、入り口から酸素濃度計を垂らした程度では、数値が変わらない。ピット内の人通口の向こう側や、奥まったところを計測すると、数値が下がる場合があるので注意が必要。

一回目の換気後に、上から測定器を垂らして21%の表示がされていれば、奥の方に酸欠状態の場所があったとしても、21→20→19→18%といった感じで、その場所に近づくにつれゆっくり下がっていく。18%から先は絶対に深追いしない。(18%以下は保護具が必要)

酸素も硫化水素も、数値が振れたらすぐに換気。

風管が届かない場合は、届く位置に設置しなおす。

風の流れを考えて、風の入りと出の2か所ピットのふたを開けておく。

 

 

その4 作業環境測定

酸素欠乏・硫化水素中毒危険作業の作業環境測定は、どちらも作業主任者が行う。

測定のタイミングは、作業開始前、作業再開前、異常発生時。

酸素濃度は3か所以上、硫化水素は5か所以上、測定箇所を設ける。とかあるけど、目に見えて危ないところは測っておいた方が良い。

ここで手を抜くと、見えてるところは21%以上の酸素はあるが、奥の方の作業場はやや酸欠気味で、作業員が体調不良を訴え早退するなんてことも起こり得る。安全面から見ても、作業工程や能率の面から見ても、誰も得をしない事態になる。

 

 

その5 保護具

酸素濃度18%以下、硫化水素10ppmを超える場所では呼吸用保護具の着用が必要。

逆に言えば、酸素濃度18%以上、硫化水素10ppm以下であれば、呼吸用保護具はいらない。

保護具はいらないが、作業を行う場合は監視員が必要。

 

 

雑感まとめ

技能講習自体は、2日座学、1日実技といった割合。

実技の中には、AEDを使用した救急蘇生や、酸素濃度・硫化水素の測定を模した実技試験がある。

受ければほぼ受かるが、一人~二人、補習になっている人もいる。

 

硫化水素

硫化水素計は汚水層やマンホール等を開けない限り、ほぼ使用しない。マンホール等を開けても、今まで数値が振れたのは1度くらい。たまにしか使わないので、数値が振れるとビビる。2~3%数値が振れるだけで、鼻先をかすめる程度の異臭がする。数値が振れたら換気が鉄則。

硫化水素の濃度が上がりすぎると、においがしなくなるので注意が必要。

 

酸素濃度計の選定

酸素濃度計がピーピー鳴りっぱなしの状態となり、「壊れた」という人がいる

大抵、電池が無いか、校正ができていないだけ。「通常状態の空気は21%である」ということを基準に、そこからどれだけ差異があるかを表示しているだけの測定器が多いので、校正をしなければ基準値がずれたまま、おかしな結果になる。

 

たまに、現場で用意されている酸素濃度計が、測定部と表示部が一体になっているタイプ(メットや服に装着するタイプ)のもので、他業者から「そっちの濃度計貸してー」と言われる。ピット内等の作業のために、酸素濃度計を購入するのであれば、測定部と測定結果の表示部が分かれた(コードでつながっている)タイプのものをお勧めする。

内部に入る前に、上から酸素濃度計を垂らして、内部を測定しなければならないため。

 

水中ポンプの選定 

水抜きのポンプはSL=0まで水を吸いだしてくれる水中ポンプ(バキュームポンプ)を選定する。

ただ、広い敷地をカバーするためにポンプを設置する場合、中間地点を設けると思うので、中間地点に置くポンプはオートポンプをお勧めしたい。

(先日、応援に行った現場で、管理しきれず煙を吹いてるポンプを見かけたため。)

オートポンプはセンサーで水位の上昇を検出し排水するため、電源管理の手間が減る。

吐出能力によるが、例えばポンプを4台用意するなら、バキューム3台、オート1台という割合。

オートポンプを舟やバケツに入れれば、センサー位置まで水位が上昇するため排水可能になる。

 

 

「酸素欠乏危険作業主任者 」としての実務経験は、「労働衛生の実務」として認められる。

「学歴+酸素欠乏危険作業主任者の実務経験」で、「衛生管理者」の受験資格を満たすため、受験する場合は早めに取得しておくと良い。