コウシのメモ帳

資格ブログ

有機溶剤作業主任者

一定の場所において有機溶剤を取扱う作業を行う場合、現場の指揮、監督、労働者の衛生の確保を行うものとして、選任しなければならない作業主任者資格の一つ。

 代表的な有機溶剤業務に、塗装、接着、洗浄、印刷がある。

有機溶剤業務に従事する者に対しては、「有機溶剤業務従事者」の安全衛生教育が必要。

一定の場所で作業を行う場合、現場に一人以上、「有機溶剤作業主任者」の配置が必要。

 

有機溶剤作業主任者

資格概要

資格区分:技能講習

受講日数:2日間

受講要件:満18歳以上

関連法規:安衛法 第14条、施行令 第6条22号

難易度:修了試験(1時間程度)あり(受講すればほぼ合格点を取れる)

 

内容

その1 講習内容

有機溶剤とは、ほかの物質を溶かす有機化合物のこと。総じて揮発性が高い

塗装、接着、洗浄、印刷といった業務は有機溶剤の揮発性を利用した作業のため、揮発した蒸気を吸い込みやすい環境にある。

揮発した蒸気を吸い込み続けると、血液中を循環して有機溶剤中毒になる。

高濃度の場合は、急性中毒。低濃度の場合、長期に渡ると慢性中毒になる可能性がある。

人体に吸入された有機溶剤は、肝臓や腎臓に溜まりやすく、疾病を生じてもすぐには気づかない場合もある。

このほか、皮膚や目などの粘膜に触れることで、直接障害を引き起こすこともある。

 

 

その2 有機溶剤の種類

有機溶剤作業主任者の管理が必要な有機溶剤は、全部で44種類。

第一種有機溶剤…… 2種類

第二種有機溶剤……35種類

第三種有機溶剤…… 7種類

そのほか、特別有機溶剤 12種類

特別有機溶剤は発がん性物質のため、有機溶剤とは分けて分類されている。

その取扱については、有機溶剤作業主任者+特定化学物質作業主任者の資格が必要。

 

安衛法等に書かれている「有機溶剤等」には有機溶剤の含有率が5%を超える混合物が含まれる。

「シンナー」という言葉が「混合溶剤」全般のことを指すことを初めて知った。

 

 

その3 配置要件

有機溶剤作業主任者の選任が必要な、一定の作業場とは主に通気不十分な屋内作業のこと

この屋内作業に該当するのは、窓等、開口部の面積比率が3%以下の屋内作業場。

ただし、作業時間1時間当たりの有機溶剤の消費量が、許容消費量を超えない場合は除外される。

とはいえ、イメージ的には大匙1杯いかないくらいが許容消費量。(あくまでイメージ)

 

 

その4 保管方法

有機溶剤の保管方法については、SDS(安全データシート)に記載されているとおり。

基本的に、大体どのSDSにも以下のようなことが記載されている。

  1. 熱、火花、裸火等の着火源から離して保管すること
  2. 冷所、換気のいい場所で保管
  3. 施錠して貯蔵

有機則にも同じようなことが記載されている。

現場に鍵のかかる有機溶剤用の保管庫(換気機能付き)が有る場合は良いが、無い場合は基本的にその日ごとに持ち帰ることを推奨したい。

翌日も作業があるからと、現場の見えるところに置きっぱなしにして、上からは怒られ、作業員からは明日も作業があるんだからいいだろ、と文句を言われの板挟みがつらい。(せめて見えないところに置いてくれ)

 

 

その5 覚えておくこと

有機溶剤関連で押さえておくべき単位は2つのみ。

「%」……爆発下限界等を表す場合に用いる。100分率

ppm」……健康被害を表す場合に用いる。100万分率

1%=10,000ppmであり、1ppm=0.0001%ということ。

アセトンなどは濃度1ppmで人体に影響を及ぼし、200~500ppmでにおいを感じ始める。

基本的に、有機溶剤はにおいを感じたらアウト。すぐに換気すべし! と講習で言っていたような気がするんだけど、この辺うろ覚え。

 

 

その6 安全設備

有機溶剤作業でも推されているのが、プッシュブル型の換気装置。

一方から送気し、反対側から吸気することで、空気の流れが一方向になるタイプの換気装置。

大体の危険作業において、換気が大事。

 屋内作業場で換気をしない場合、送気マスク・有機ガス用の防毒マスクが必要になる。

 

 

その7 健康診断

通気不十分な屋内等で有機溶剤業務に従事する場合、有機溶剤の特殊健康診断を受ける。

雇い入れ時、配置換え等作業変更時、その後6か月ごとに1回。

有機溶剤の特殊健康診断を受けた場合は、報告書を労基署に提出。

 

 

その8 有機溶剤の処理

有機溶剤を使用したあとの残材の処理方法は次の通り。

有機溶剤をしみこませたウエス等は、密閉して捨てること。火災防止のため。

溶剤の入っていた空缶等は、有機溶剤が揮発した蒸気が発生する恐れがある場合、容器を密閉するか、屋外の一定の場所に集積する。中身を完全に乾かしてから廃棄する。

 

 

その9 事務

雑多な事務仕事として、下記の作業がある場合もある。

 

 

雑感まとめ

有機溶剤作業主任者の技能講習は、講習中に試験に出る範囲を集中的に講義してもらえるため、受ければほぼ受かる。

稀に落ちる人もいるので、講義はきちんと聞いておいた方が良い。

 

有機溶剤の作業に従事する人のための教育として、「有機溶剤作業従事者」の安全衛生教育がある。しかし、現場で行う有機溶剤業務の大半が一人作業だと思われるため、安全衛生教育を受けるよりも、最初から「有機溶剤作業主任者」の技能講習を受ける方が早い。

元請けによっては、1社につき1人以上の作業主任者の配置を求めるため。

作業主任者資格を保持していないのならば、一つ上の請負事業者の作業主任者資格保持者に監督してもらえばいいと思う。それで良しとするかは、元請けの判断による。

 

有機溶剤を使用する際に気を付けるべきは、換気と火事。

有機溶剤特有のにおいがしたら「まずい」と思うくらいがちょうどいいと思う。

窓やドアを全面開放して、扇風機を回す等すれば、すぐに揮発してしまう。

 

有機溶剤を使用する=必ず有機溶剤作業主任者が必要! というわけでもない。

「開口部の面積比率が3%以下の屋内作業場」で1時間当たりの許容消費量を超える量の有機溶剤を使用する場合に有機溶剤作業主任者の配置が必要になるだけ。

屋外で使用する場合や、窓を開ければ開口面積比率3%を超える場所であれば、有機溶剤作業主任者の配置は必要ない。

ただし、有機溶剤を現場保管する気満々なら、作業主任者の配置は必要

 

有機溶剤の保管庫というと身構えてしまう人が多いが、必要な条件は「鍵」がかかること、「換気」ができること。屋外であれば、柵付きの棚に南京錠をかけるという状態でも条件を満たすことができる。

 

今まで「あ、なるほど、これはやばい(呼吸するたびにえずくレベル)」と思ったのは、塗装中の屋内と、ウレタン断熱吹き付け後の屋内くらい。マスカーテープで入り口を覆うため、確実に開口面積3%以下になる。

 

有機溶剤作業主任者」としての実務経験は、「労働衛生の実務」として認められる。

「学歴+有機溶剤作業主任者の実務経験」で、「衛生管理者」の受験資格を満たすため、受験する場合は早めに取得しておくと良い。